平成19年3月15日。
 
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空が、全面同じ色で塗られたかのように青かった。

あの日、いつものように上履きを仕舞うと、ランドセルをゴトゴトと背負い直しながら校庭へと出た。


薄暗い校内から、予期しない程の青い空と、眩しくて俯かざるを得ないほどの明るさ。
何度考えても、気持ちが良いはずの天気にも関わらず、何故私はこのように俯かざるをえないのか。
そして、その辛い状況の中、歩みを止めずに歩くのか。

そんな、子どもにしてはやや抽象的過ぎる事を考えつつも、それでも歩みは止めることは出来ず、
ラバーで覆われた校庭を抜け、鉄棒の脇へと進んでいった。

変哲もない鉄棒にも一つだけ奇妙な模様があり、それは修理の際、
トンボが流し込んだばかりのラバーにはまったまま死んだ跡だと、数日前に聞いたばかりだった。

それを横目で見たまま通り過ぎようとした瞬間、「それでも、トンボは形を残した。」という奇妙な考えが浮かんだ。


校庭を前を向いて歩けなかったとしても、ゆっくりと歩んでここまできたように、
このまま私は小学校を出、中学、高校、大学、行けたら院へと進むだろう。
でも、それはただ進んだだけであり、形を残し、一瞬でも目の端で捕らえられるような事柄ではない。

ただ、今親が子に向けている期待であり、子がせめて叶えたいと思っているもの。
それだけのことである。

そっと鉄棒に近寄り、足先でトンボの形をつつく。

そのまま、見えもしないのに空を見上げ、黄色い帽子で日を遮りながら薄目で空を見あげる

先ほどの雲ひとつ無い、妬ましい程まぶしく見上げられなかった空ではなくなっていた。


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「文章をかけ」といわれると、うっかり「私」という言葉を一切抜きで書いてしまい、
物凄い勢いで怒られるかえるです。
こんばんは。

たまには趣向を変えまして、前ふりと本文を変えてみました。

とある講義中、課題として書いたものの改訂版なのですが、
ちょっと面白い課題でしたので、こちらでもこそりと更新してみました。

もし課題内容が分かりましたら、こっそりと耳打ちしていただけると幸いです。
次回からは、もっと捻ってみます(ぺこり
      
 
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