5月2週。
「さほど、手入れはいらない庭付きです。」
立地条件だけで引っ越した家には、小さな庭がついていました。
不動産屋さんと下見をした時には、とても寒い時期でした。
どんよりとした冬空の下、何も生えていない庭の説明としては、
大変親切な物だと思ったので、特に考えずに引っ越しました。
正直、庭なんて、何の関心も持っておりませんでした。
しかし、季節は巡ります。
何も生えていない、枯れ果てた庭にだって春が来ますし、
芝だって、じわじわと生えてきます。
「芝だけなら、ときどき刈り込めば良いらしい」と何かで読んだので、
とりあえず大きな芝バサミだけ買っておきました。
苔でも育ててみる感じ。
あの時は、そう思っていたからです。
けれども、世の中そうは上手くまわりません。
どこからともなく、タンポポの種が庭に軟着陸したり、
世の無常の端から、ドクダミの髭根がワープしてくるものです。
ある日、ふと庭に回ってみたら、そこにはジャングルがありました。
正確を記すなら、まず庭に入るための扉が開きませんでした。
生垣の木が枝を伸ばしすぎて、回すにはまず叩き切る必要があったのです。
あまりの驚愕に、とりあえず叫んでから叩き切り始めました。
人間、初めてでもどうにかなるものです。
ひたすらばっさばっさと切り刻んでは袋に入れること1日。
なんとか入口を突破する事が出来ました。
庭、すっごいことになっておりました。
本来、土から数センチの所で剪定されている芝が腰の位置まで伸び、
それに合わせて雑草も高々と背丈を伸ばしておりました。
どうやら、生垣の木々の葉っぱが冬の間に落ち、良い具合に腐葉土となり、
育つには絶好の機会を提供してしまった模様です。
現状は分かりました。
しかし、このままにしておくと、確実に夏には蚊が大量発生いたします。
刈り取って、さっぱりさせるしかありません。
というわけで、一日最低10分間。
調子が良い時は30分を目安に、庭を耕す事となりました。
1週目は、ひたすら草を刈りつづけ、腰を痛めました。
2週目からは、「根元からやらないと、奴らは生える」と学習し、土から掘り起こしました。
3週目からは、何かを蒔けばいいのでは?と家庭菜園を決行し、
大変に苦い野菜を作り上げた後、土づくりの奥深さを実地学習いたしました。
どうにかこうにか、春ののびやかな緑を倒し、夏の暑さを根性で回避し、
秋、冬の落ち葉との戦いに勝利した今、また、春がやってまいりました。
春です。
何だかすっごい暑い気もいたしますが、木々が本気になり、
ひと雨ごとに勝手に成長し、むやみやたらと枝を伸ばす時期となりました。
体調が悪い、仕事が終わらないなどと言い訳を言っても聞いてくれない相手です。
絶対にさぼらない。
機会をいつまでも待つ。
チャンスが来たら一気に伸びる。
いつの世も、最後に勝つのはそんな彼らなのではないか?と思いつつ、
ちょろちょろと本気で草引っこ抜く、そんな時期となっています。
猫の額の庭からでも、学習できる事がある。
毎日が、絶望と学習の連続です。
つらい!
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