平成27年3月8日。
 
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3月2週
 
辛いときには、ビールを飲めばいいのです。
 
金色の液体に白い気泡、そのまま泡へのグラデーション。
冷蔵庫でよくよく冷やしたグラスでいただくあの一口目。
 

たまりません。
 

どう良いのかと問われれば、あの苦味、あの炭酸、おつまみの素敵さと
様々な角度から延々と語ることもできますが、
お酒の味の良さそのものよりも、更によいのが「酩酊」です。
 
人間、普段は頭の中であれやこれや考えて、七転八倒しておりますが、
この脳内七転八倒=内言、その状態が大変ゆるやかになります。
 
「これは言わないでおこう」「これは後でやろう」と、
ちまちまと考える事や、気持ち、思考なんぞが大変のんびりになるのです。
 
酔っ払いの発生です。
 

飲めば飲むほど、ふわりふわりと広がっていく幸福感。
「でも、楽しいよ?」なる悪魔の囁きに、脆くも崩れる節制状態。
 
なにより、過去のあれこれや、未来の不安に気を使わなくてすむという、
あの、「今、この瞬間」だけの感覚の肥大。
 
これまたやっぱり、たまりません。
 

あまりに毎日行ってしまうと、今度は別の問題が発生しますが、
辛い時の憂さ晴らしの一つであるならば、贅沢この上ありません。
 
が、しかしです。
別にアルコールを摂取しなくとも、この内言に影響を与えることが出来ます。
ストレス、過労の類です。
 
日々に労働を課しては、てんてこ舞いにさせ続けると、
思考制御の要である内言は、限界をこえて暴走をはじめます。
 
あれをやらないと。
いやいや、こっちも抑えておかないとあかんことに。
こっち!こっちもお忘れでございますよ!
 
仕事をすればするほど、考えれば考えるほどにくたびれていく内言達。
思考や行動統制をつかさどる物たちが過労に陥るとなると、
最後に行き着くのは、思考の決壊、つまり独り言の発生です。
 
「あー、何だか凄いことに!」
「無理です、それは無理です!」
「お代官様それだけは!」
 
文章になっているうちは、かろうじてセーフ。
末期になると、「うぇぇぇぇぇええええええ゛・・・。」と、
言葉にならぬ声、訴える先のない抗議の魂だけが、
一人きりの部屋だけではなく、ところかまわず出てくるのです。
そういうものです。深くは考えない方向でお願いいたします。
 
更にです。
人間、仕事が忙しくても大変ストレスに感じますが、
自分の予想をはるかにこえた状況に直面し続けてても、ストレスを感じます。
 
車と喧嘩をし、華々しく負けては救急搬送。
半日で退院しては、パジャマのまま会議出席。
数日で松葉杖を卒業しては、びょこびょこと飛び回り、
「なんだか邪魔」とギプスを外そうと画策するのを目撃し続ける。
 

話で聞くと楽しいですが、直面し続けるのはかなりのストレス。
毎日がぎりぎりとした気分でたまりません。
そのストレスはかえるを毎日さいなみ、内言にストレスと暴走を与え、
ついには自転車に乗りながら「うぇぇぇぇえええええええ゛」と叫ぶには
十分なものでした。
 
おりしも、叫んだのは神社の隣でした。
うっかりと同じ道に居合わせた方には大変なご迷惑をおかけしました。
大変申し訳ありませんでしたが、よもや自律はむりでございました。
 
かえるの内言は、もはやはみ出し放題でした。
 
それを自覚し、病院にかかったときにはよもや手遅れ、
ストレスは内言と胃に影響を与え、胃は現実逃避も出来ぬ姿へと
変わり果てておりました。
 

辛いときには、ビールを飲めばよいのです。
それは重々承知です。
ビールを飲んではいけないときには、人は果たしてどうすればよいのか。
 
「いま、ここだけ」しか考えない内言の鈍化。
 
あの幸せがほしいがばかりに、うっかりと買ったビールを前に、
ここ数日ほど、眺めるだけの拷問が続いております。
 

せめて、ノンアルコールを!
      
 
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