平成17年9月10日。
 
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あんまり香りが得意ではなかったのに、ある日を境に気になるようになっていった。
とだけ書くと非常に艶っぽい話になりますが、一冊の本が原因なだけのかえるです。
結局、いつも一緒の話。

「すっごく面白いから読んでみて」と渡され、読んでみたところ一晩では終わらず、
次の日に「下巻をよこせ!」と奪い取って読んだ本があります。

高畑 京一郎著の「クリス・クロス」という、
同時に256人の人が、仮想現実内でゲームをやってみたらどうなるか?
という、発想よりも展開に根性を入れないと難しいお話だったのですが、
256人もプレイヤーが居たら必ず発生する人間関係トラブルと、
お約束のコンピューター暴走というお話が非常に楽しいお話だったのです。

そんな全力で沈没船の中から脱出するような緊迫感の中、
「今、ここは現実か?それとも幻の中か?」という問いに、
主人公が答えたのが、「幻の中は、重力と香りは再現することができない」という言葉。

どんなに機械が発達しても、「現実」に「幻」は近づくことが出来ないという意味で
使われていた言葉だったのですが、その言葉に妙に納得してしまい、
「世の中、色んな香りがあるのだなぁ」と香りを集めるようになってしまいました。

大好きでたまらないユリの香りであるフラカ。
手でつかめたら良いのにと思うのに、全く捕まえられない万華鏡という香り。
眠りに落ちる寸前のような気持ちよさである、ミル。

そういった香りを見つけ、捕まえられるようになり「ああ、幸せ」とうっとりしていたのですが、
「香り=現実の一部」と安直なかんがえを全力で覆えすような、
「コンピュータであっても香りが再現できる装置」というものが、出来てきてしまいました。

映画館の一部では、物語に合わせてポップコーンやチョコレートの香りを噴射して
臨場感を高めたりしていますし、近い未来、家庭用に改造した装置を使って、
新しい香水や料理の香りを家で楽しむことが出来るようにもなりそうです。

そうなると、前述していた「幻は香りを作ることは出来ない」という仮説は全力で覆され、
「幻は重力を作ることが出来ない」ただ一つが現実との違いとなってしまいそうです。


なんとなく、そこだけの違いだったら幻の方が楽しそうだなぁとも思うのですが、
どんなに再現度の高い香りであっても、香りは香りでしかなく、
本物の香りには実は太刀打ちできないというところにも、違いを見出すことが出来そうです。


どんなに似ている花の香りであっても、咲く直前の花の香りにはかないませんし、
季節や天候、気温によって刻々と変わる香りを再現することは当分出来そうにはありません。


限りなく近いまがい物と、一瞬たりとて同じ香りでいてくれない本物。
どちらがより現実なのか? と問われると、そろそろ難しそうな現状ですが、
より本物なのは、予想することが出来ない物そのものでは? と今のところ思ってみたりするのです。


こふこふ。
      
 
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