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喉が辛いときには、温かな喉に良い飲み物を。
熱と共に辛くなるときには、甘くてたまらないかぼちゃのパンを。
小さな頃の記憶は、いつになってもひょこりと首を出すのだと、
しみじみしながらげふげふ言っていたかえるです。
今晩は。
小さい頃には憧れだったり、美味しくてたまらなかったお菓子達。
ところが、大人になって買占め可能になる頃には味覚が合わなかったり、
口が肥えてしまっていたりと、現実の味にがっかりすることが多い。
ということから、
小さい頃に好きだったお店は、大きくなってからは行かない方がいい。
等という、悲しい一文が大人の心の中に大きく書かれている事があります。
ある意味おいては間違いなく事実なこの一文。
なのですが、小さい頃の味覚というのは懐かしさと習慣の基礎とあいまって、
時には食べたくて食べたくてたまらなくなり、大葛藤を発生させてしまうことがあるのです。
風邪の時に食べたかぼちゃのパン。
当時から甘くてたまらない一品であったので、今食べたら甘くて転がる上に、
多分、かぼちゃペーストでのパンなので再現可能だろうなぁとは思うのですが、
それでも、食べたい。
食べて、食べ終えたら苦い薬を飲んで、そのまま寝たら楽になるという体調の追体験をしたいなぁと、
ついうっかりと思ってしまったのです。
世の中、ついうっかり決意した大人程たちの悪いものは無く。
今までは電車で2時間かかるパン屋さんになんて、用事があっても行きにくいと思っていたのですが、
「食べたい」の一念で大阪まで通っていた事実を思い出したら、さほどのものでもありません。
近くの祖父にお見舞いに行く連絡をし、時間をつくって行ってみました。
角を曲がり、道なりに歩くことすぐ。
当時から移転も改装もされていない、そのままのパン屋さん。
小さい時には気づきもしなかったのですが、子供用に棚を低くしてあり、
大人にはちょっと手狭な小さなお店の作り。
なんだかリトルジャイアントな気分に浸りつつ、好きなパンを物色しようとしたのですが、
既にお昼も大分過ぎていたため、種類はプレーンのもの他無く。
普段からむしむしと食べていた、干しぶどうのパンを嫌というほど買い占めて
うっかり2つも3つも食べて、夕飯が入らなくなる当時の状態そのままに、
一匹地味に帰宅しました。
あれから何年も経って、美味しいと有名なパン屋さんでパンを食べたりもしたのですが、
それでも、このパン屋さんが一番美味しいなぁと思うのです。
原体験は、恐ろしい。
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