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具体的にしないと行けない事が増える12月は、「あれとそれとこれをする」と計画表を立てて生活しなくてはいけませんが、
11月はその下準備に走り回り、あっちこっちに出かけたり、来年の申し込みをしたりと、
奇妙な程にそわそわと落ち着かない月だと思うのです。
そんなわけで、お稽古事を1ヶ月お休みしているかえるです。
復帰したい。
どうも昔から、白檀特有のゆるりとした香りが好きでたまらない。
階段を全力疾走で走り上がっているときも、お昼を食べる暇がなくてしょげている時も、
その香りさえあれば、足は止まり、気分は急上昇を覚える。
お茶の弟子入りの時、「お稽古事では、白檀の木片を使ってお稽古事をしますよ」との
素敵発言だけで弟子入りを決めてしまい、以来熱心に香りを嗅ぎに通っていたのです。
週に一度、ふかふかとうっとりして90分を正座で過ごす。
晩、着ていた服を片付けるときに移り香にうっとりしては抱きしめる。
弟子入り以前の生活を振り返ると、天国のような生活送っていたのですが、
地獄の三丁目に足を踏み入れていたと知ったのは、お茶をお休みして2週間目の事でした。
どんな忙しいときでも、香りを嗅ぎさえすれば幸せになれた日々。
お休みをとったことにより、時間的にはゆとりが出来たのですが、
今度はどうにも心が休まりません。
お茶煎れたい。
丁寧にお炭をおこしたい。
お湯を入れてから蒸しあがるまでの間、全力で茶器を拭く時間が素敵。
やっぱり、白檀の香りでうっとりしたい。
日々強まっては、かえるを静かに攻めたてる甘い誘惑。
それに相反するかのように日々悪化する社会と体力現状。
現状把握をすればするほど、復帰できないことの事実を知るだけの現実に、
辟易しながら日々跳ね回っていたところ、お外でお香の専門店を見つけました。
昔は色々な手順を踏まなくてはいけなかった、家での香り。
最近は火をつけるだけの手頃が増えているとの説明を受け、そそくさと購入。
帰宅し、とりあえず一本。
中々香りが良かったので、お風呂上りにもう一本。
幸せいっぱいになれたので、夜寝る前に部屋で炊いて空気清浄機に怒られつつ一本。
法律で使用を禁じられた物でなくて良かったと、心底何かに感謝しつつ、
毎朝毎晩炊いては悦にいっていたのですが、お稽古中の天国にいる幸せはやってきません。
どうしてだろうか? と疑問に思い、やはり、木片をお炭でいぶしていないからか? と
一人で悩む炊いた後。
火をつけるだけで5分で炊き終わり、気軽に片付けも出来る携帯用と違い、
お稽古の香りは、お炭を一々おこし、火を調節してからそっと乗せる。
乗せ方を間違えると一気に燃え尽きてしまうので、上手にバランスをとって、
ゆるゆると香らせる。
世の中、本当に手軽に何でもできるようになりました。
ある程度までは、本物に近く満足に足るできばえです。
けれども、あのめんどくさい手間隙をかけ、上手に出来たときの満足と香りには、
そうそう成り代われるものではありません。
ふわりと酩酊する香り。
凝れば凝るほど、札束を燃やした方が安上がりになるほど天井知らずの香りのもと。
世の中には、知らずに過ごした方が良いことも沢山ありますが、
合法的に生きながら天国にいく体験も、そうそう無い気もするのです。
はやく、次のお稽古に行きたい。
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