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実は、かえるは片思いをしているのです。
あまりにも大好きで、話し掛けることも、視線を彼に向けることもできないぐらい
本当に大好きな人が居るのです。
ふと、何かの用で彼がかえるの近くにくると胸がどきどきします。
色々なお話をしてくれるのですが、恥ずかしくて目をみてお話することが上手に出来ません。
かえると一緒に居てくれる人が、気を使って彼に色々話し掛け、出来るだけ長い間
かえるの座っているところに居るようにしてくれるのですが、
いつしか彼の低く柔らかいそしてとても耳に残る声に聞き惚れて、話しかけようと言う気すら
おこらなくなるのです。
かえるが彼に来て欲しいと思えば、思っただけ来てくれるぐらいとてもかえるを大事にしてくれて、
そして、その優しさはかえる以外の人にも平等にあって・・
それでもかえるはその優しさだけでも良いから、一瞬でも良いから彼に優しくして欲しいのです。
彼の身のこなしが、そして声が、お話しする内容、話しかけた事に対する上手なお返事が、
そのすべてにうっとりし、そして一つでも良いからかえるもそれを取得したいなぁと思うのです。
彼はかえるの人生のお手本です。
けして慌てず、けして困らず、常に余裕を持ち、そして自分の仕事場では自分の仕事に誇りをもち
それを完璧にやりとげる人でした。
メニューの説明は、一度たりとて発音に詰まったのを見たことはありません。
彼がかえるのテーブルのサービスを担当したとき、コップの水が一定量以下になったことはありません。
何かが欲しい、このご飯の調理法を聞きたいという事を思った瞬間、彼はにこにことテーブルの横に立っています。
そして、何より かえるの好きな食材、嫌いな食材、好きな調理法、食前酒の小さな冗談を
かえるがとても楽しみにしているということを、彼は完全に覚えています。
彼が居るときに、かえるが不快な気持ちになったことは一度たりとてありません。
すべての神経を傾けて、あなた方を歓迎していますというサービスをするとある方を
かえるはとても愛しているのです。
自分の行うことに、責任と誇りを持ち、笑顔でそれを行える
そんな人にかえるはなりたいと思うのです。
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