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かえる、その人のこと嫌いではありませんでした。
誰に何を言われても、むしろ好きという方向に気持ちは向いていました。
もちろん、その人の全てが好きというわけではありませんでした。
けれども、嫌いな点を含めても、嫌いではなかったのです。
暇があればお手紙を書いて。
暇があればお話をして。
お祝いをして。
少なくとも、かえるにとってはそれはとても楽しいものでした。
他の人が言うその人は、必ずしもかえるの知っているその人とは違っていましたが、
かえるは、その人のことが好きでした。
他の人の言う事は、基本的には関係なかったからなのです。
よく、会いに行きました。
その人も、時間があれば遊んでくれました。
その人も、よく会いに来てくれました。
かえるも、時間が許す限り一緒に遊びました。
眠りに落ちる直前までお話をして。
小さな秘密をお話して。
そのまま、眠りに落ちて。
けど、ある時からふと溝が出来ました。
最初はほんのかすかな。
気がついたときには、すでに埋められないのでは?とおもうような。
好きになってから、お友達になってから、幾つかの季節が過ぎて
少しづついろいろな事がわかってきたと思っていた矢先でした。
少し、その人のことが分からなくなりました。
今まで知っていたその人と、周りがいっているその人の違いが激しくなりました。
今まで知っていた人は誰だったのだろう?と悩むようになりました。
けれども、悩めば悩むほど、もっと分からなくなりました。
考えれば考えるほど、人から聞けば聞くほど。
分からない事は増えていきました。
ふと気がつくと、その人と合う時間が減っていました。
話す時間も、お手紙のやり取りも減っていました。
途方にくれました。
それでも、その人と一緒に過ごした時間は大事だったからです。
その人と一緒に過ごした時間は、何物にも変え難かったのです。
それでも、好きだったのです。
会えば苦しくなると分かってても、
後で色々言われて、余計苦しくなると知っていても、
それでも、
ただ、大事なお友達だったのです。
今は、ただ、さようなら。
いつか、また会えたなら、
もう一度、お友達から始めませんか。
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