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例えデート中でも、仕事先に帰らないといけない状態であっても、
視認してしまったら最後。
確実に鞄の奥底に詰め込んでもって帰ってくるかえるです。
食い意地大魔神です。
生クリームやバターが入ったものよりも、果糖の物の方が好き。
そのままでも、干しても、半生でも、ちょっぴり加工されたものでも、
焼酎でつけてあっても皆美味しい。
と、好きなものに対してはやたらと守備範囲の広いかえるですが、
その中でも特に好きなものが、砂糖漬けのかんきつ類なのです。
きらきらと光っているくせに、皮しか甘くない金柑や、
そのままでも美味しいけど、コトコトと煮崩れたオレンジのうっとり艶やかさ。
お砂糖無しで煮続けたジャムには、噛むたびに甘くなる固めのパンと一緒がいい。
すっぱくてそのままでは食べにくいものは、皮をむいた後にグラニュー糖をまぶして一晩。
どれもこれも、全て食べちゃいぐらい素敵なのですが、
小さい頃から大好きでたまらず、人の分まで食べて怒られていたのが「ザボンの砂糖漬け」。
…。
なんだか、今までのキラキラとしていたものを全てぶち壊しにした上に、
穴を掘って破片まで綺麗に埋めてしまった感があるのですが、好きなものは好きなのです。
頭ほどに大きいにもかかわらず、可食部は30%ぐらいという、情けなさいっぱいのものを、
「皮は砂糖漬けで!」という逆転の発想で全部食べてしまうという根性。
しかも、実を砂糖漬けにすると柚子のような後味にもかかわらず、
皮の方は、ねっとりとした綺麗なあめ色、あめ味になるという不思議な果実。
なんだか、最後のお情けで逆転できたかのようなこの「ザボンの砂糖漬け」、
いつも残り物のように一匹でほそぼそと生きているかえるのようで、妙に愛着が沸くのです。
美味しいし。
そんなこんなで、見つけたら必ず買ってきてはうっとりと魅入っている砂糖漬け
なのですが、
どうもなかなか食べられないのです。
1日目。 買って来てうはうは
2日目。 うはうはが続く。
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x日目。 誰か遊びに来た人に食べられて凹む。
好きで好きで好きすぎて、買ってきたタッパーから出せないほど大好きな砂糖漬け。
けど、食べなかったらただの砂糖の固まりです。
硬くなる一方です。
どうせ戴くなら早い方がいい…とは思っているのですが、どうにもなかなか食べられない砂糖漬け。
「薄く切って少しづつ食べるなら」と試しに買った当日に切ってみたところ、
それは見事に次の日には居なくなっていました。
切ったら最後「一口だけ」と食べ始め、それが延々と続いては最後までいってしまう砂糖漬け。
でも、切らなかったらいつまでも「ああ、手元にあるって素晴らしい」とこちこちにしてしまう
砂糖漬け。
好きなものが手元にあるのも、それをおなかいっぱい食べるのも、それは素敵なことなのですが、
誰も取らない場所においてあるのだから、せめて2日は持たせようよ…と思った今回。
どうやら、あんまり好きなものは「一瞬」か「延々」という選択肢しかないのかもしれない。
とそこはかとなく思った夕方でした。
…お夕飯、入らない。
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