平成26年12月7日。
 
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12月1週

マフラーと黒いブーツを定位置にセット。
ショートコートを、ロングコートへと変更。

冬の装備が完了したら、次のイベントは「予防接種」です。

大変に絶妙なイベントです。
ぎりぎりまで引き延ばしたくもなりますが、伸ばしすぎてはいけません。
ワクチンが無くなった後では、元も子もないからです。

ほどほどに寒くなく、熱もなく、有る程度元気なそんな1日。
そんな日だと気がついてしまったその時が、「その日」です。

せめて最後は綺麗な格好で。
まずは新品の下着のタグを切り、おもむろにお風呂に入ります。
帰宅後にお風呂に入る勇気と気力はないからです。

先に出来る事は、全て事前にやっておく。
これが「その日」のお約束事です。

せめて熱が出てくれれば良いのに…と渋りながらも夕飯を作り、
最後のお茶を淹れます。

熱くてもぬるくてもいけません。
最後のお茶なのです。
とっときのお菓子と共に、ぐずぐずといただきます。
血糖値をあげておけば、あの瞬間、酷い目に合わないような気がするからです。
特に臨床結果はありません。


やる事が終わったら、ドナドナの子牛のごとく大人しく病院に出かけます。
子どもの頃はある意味幸せでした。
あの頃は、「暴れて抵抗する」という役割だけですみました。
今では、「いやぁぁぁ」と叫ぶ人と「打たないと駄目だから!」と説得する役割
が兼任です。
世知辛い時代へと突入しました。


病院に着いた後も一苦労です。
何度かの「やっぱり今度にします」という言葉を飲み込みつつ、
ふるえる手でサインします。

ここまで来ると、もうおしまいです。
取り返しのつかない事をしてしまった感を十分に感じつつ、
逃げ帰らないという、社会の外圧に震え、耐えるしかありません。


「帰りたい」「どうしてこんな事に…」という気持ちを、
脳内で呟き続けると、そのうち診察室に呼ばれます。


走って逃げたい気分は絶頂です。


誰も悪くはありません。
インフルエンザにかからないよう、技術の粋を集めたワクチンです。
大変よろしい物のはずです。


ただ、怖いのです。
理論も仮定も功績も皆知っておりますが、
感情は全てを陵駕するものです。



そもそも刺すのが、よろしくありません。
なんかこわい。あの独特の痛み良くありません、あの間も大変よくないです。
言いがかりだという事は、こちらも十分分かっております。

いや怖い。
看護師さん怖い。あ、こちらも準備終わっているのでいつでも良いです。待ちた
くないです。
既に脳内酷い事になってます。
お願いします、痛くはしない方向で、いっそ先に腕とかつねっちゃって!いや、
もうなんか怖い。

すうってした!今、アルコール消毒された!いやなんかもう最後の一線という
が、あ、越えてる!
お願い!針は見せないで!針よくない!いや、分かった、新しい痛くない奴なの
は分かった。
そこじゃない、既に注射という現象が既によくない。
覚悟は決まらないから、お願い先にはやくしていやぁぁぁぁ。



人間の学習機能というものは、凄いものがあります。
一度「命にかかわる!」と誤認したら最後、意地でも訂正されません。

対象に対して、動機、息切れ、パニックなどで対抗し、
安全な場所へと逃げようといたします。

しかし、人間は同時に我慢も覚えます。
脳内で一人劇場を繰り返し、諦めて頭を垂れ、めそめそと予防接種も受けられる
ようになるのです。


未だに思い出すだけでくらりとくるこのイベント。
あと、1年程でまた来るのか…と思うだけで、もはや息絶え絶えの今日一日でござ
いました。



怖かった…。
      
 
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